当企画は『NARUTO』日向ヒナタ溺愛非公式ファン企画です。原作者及び関連企業団体とは一切関係ございません。趣意をご理解いただける方のみ閲覧ください。

夜の住人

TAG: 吸血鬼 (8) /only (26) /重吉 (19) /イラスト (51) /関連(4)| DATE: 10/27/2012 00:01:20

002.jpg

街に蔓延るバンパイアから人間を守るため「黄金の牙」を駆使して戦う
内気な少女日向ヒナタはバンパイアの王となる運命の子であった

吸血鬼と言えば仮面ライダー/(^o^)\wwww

[ 重吉 ]

I wish ・・・

TAG: 吸血鬼 (8) /only (26) /はすの (35) /イラスト (51) /関連(4)| DATE: 10/27/2012 00:15:21

004.jpg
忌むべきあの光に私は焦がれて止まない

[ はすの ]

目覚めの一杯

TAG: 吸血鬼 (8) /ネジ (54) /はすの (35) /イラスト (51) |DATE: 10/28/2012 06:58:34

「いっ、いやっ!血なんていりません!」

「いいから、つべこべ言わずに早く飲みなさい!躰が保てませんよ!」

長き眠りから覚めたヒナタ姫は血の苦手な吸血鬼でした(*´∀`*)
もちろんお目付け役のネジに無理やり飲ませられますv
「・・・仕方がない口移して飲ませるしかないか・・・」(☆∀☆) 「ええっ?!」:(;゛゜'ω゜'): ネジの手からコップを取りヒナタ姫は結局血を飲むのでした。
ヒナ誕といえばオエビ・・・初心に戻ってv背景はお借りしましたw

[ はすの ]

黒い森

TAG:吸血鬼 (8) /サスケ (1) /シカマル (1) /ネジ (54) /かめお (2) /イラスト (51) |DATE: 11/28/2012 19:13:13


その森には、騎士(ナイト)に守られた乙女がいた。
乙女は人ではない。
黒い森の中で、ひっそりと暮らしている。
優しい乙女は他人を襲い血を吸うなど出来るはずもなく。
乙女に血を与えるのは、乙女の虜となった騎士たちであった。

血を与え、与えられ、その絆は深くなる。
だが、永遠の命を持つ乙女は、騎士たちが消えた後は一人黒い森に取り残される。

ひとり、黒い森に…

[ かめお ]

❋COMMENT❋

AUTHOR: はすの|DATE: 11/28/2012 21:55:55|TITLE: 絵と物語のギャップが・・・

かめおさまv再び投稿ありがとうございますv
絵はポップで可愛らしいのにお話はとってもダークなんですね・・・:(;゙゚'ω゚'):
一人一人失っていく悲しみと最後一人残される孤独、なんて哀しい・゜・(ノД`)・゜・
最後に救いがあることを切に願います・・・

AUTHOR: かめお|DATE: 11/29/2012 11:46:53|TITLE: SDの影響です(^_^;;;)

昔描いたヒナタちゃん、今見ればSDチック。
引っ張り出して使ってみました。
黒い森なんてタイトルをつけちゃったので、大変ギャップのある構成になってしまいました。
でも、このネジが「ヒナタさま〜」って叫んだり、シカマルが「めんどくせえ」って呟いたり。
そして、実はこの絵がリーの寸劇だったり…なんて、そんなことを考えている自分は、かなり本編よりもロック・リーが好きかもです。

はじめてのともだち

TAG: 吸血鬼 (8) /ネジ (54) /スズシロ (2) /小説 (39) |DATE: 12/04/2012 16:18:32

今年もよろしくお願いします。去年ハナヒナで参加したスズシロです。今回はネジとヒナタで吸血鬼、ヒナタ様にはゴスロリドレスをイメージして書きました。

http://store.shopping.yahoo.co.jp/coszone/cos0063.html

↑絵がかけないので悔しいですがこんな感じとか……。 ヒナコレ、ヒナタ誕生日応援してます!
[ 本文 ]

 
 夜中にひっそりと目を覚ます。
 棺の中から静かに外に出て、幼いヒナタは白い瞳を瞬く。
 白--ほんのりと薄紫。異形だけれど、とても美しい瞳。
 短いおかっぱに白い瞳。ふっくらした頬、小さい手足。
 ヒナタはまだたったのみっつ。
「ヒナタ、起きたの」
 先に棺の中から起き出していたかあさまが、ヒナタに言った。
「そろそろ三歳のお祝いをしないとね、ヒナタに……」
「お祝い?」
 ヒナタはおかっぱの頭を揺らして大好きなかあさまを見上げる。
「ヒナタもともだちが欲しいでしょう?」
「とも、だち?」
 よく意味が分からなくて、ヒナタは白い瞳をくるりと瞬いた。
 ともだちってなんだろう。
 このときのヒナタの世界にいるのは、とうさまと、かあさまと、自分。
 あと二年待てば、可愛い妹が増えるけれど、まだヒナタはそんなことは知らない。
 世界にひとりぼっちの小さい女の子。
 それに悲しそうな瞳を向けてかあさまは笑った。
「さあ、お食事にしましょうね」


 お食事は--ワイングラスいっぱいの、赤い液体。



 ひそやかな森の中。いにしえの血を引く名家日向の吸血鬼達は、ひめやかな儀式を繰り返して夜の静寂を生きていく。



 しばらくたって、「お祝い」の日が来た。
 三歳のヒナタは赤い綺麗な衣装に着替えさせられた。蝶々柄の真紅の着物ドレス、黒い帯、黒いレースにフリルにリボン。華やかな和風のゴシックロリータ。
 それから「祖先の間」に連れて行かれてとうさまと儀式を行い、そこでヒナタは日向一族の長老達と初めて会って、認められた。
「いにしえの血を守るよう……」
 殷々と響くその言葉に身も心も縛られそうで、ヒナタは怖くてとうさまの着物の裾をぎゅっと握った。
 それからかあさまのいるお食事の間に行くと、ヒナタの知らない男の子が立っていた。
 それが、出会い。
 不思議だったのは、その子の隣に「とうさま」にうり二つの男の人が立っていた事。ヒナタには難しすぎて、事情がよく分からなかった。
「あなたは?」
「日向ネジ」
 ワイングラスいっぱいの赤い液体。
 ヒナタにそれを恭しく差し出しながら、そう年の変わらない男の子は言う。
「ネジとお呼びください、ヒナタ様」
「ヒナタ”様”?」
 幼いヒナタには何が何だか分からない。
「ヒナタ、受け取ってあげなさい。それはネジの血なのよ」
 かあさまがそう言った。


 いにしえの名家日向には吸血鬼が生まれる。極めて優れた白眼をはじめとする能力を数々持つ吸血鬼と、そうでないもの。宗家のヒナタは吸血鬼に生まれたから、赤い血をしもべたちが準備してくれる。
 だけど分家のネジは自分で血を採ってこなければならない吸血鬼。むしろ、自分より優れた吸血鬼”宗家”に血を差し出す方。同じ白眼でも、宗家と分家には決定的な差がつけられている--


 かあさまはそういうことを話した。
「そしてネジははじめてのともだちなのよ、ヒナタ。仲良くしなさいね」
 優しく、優しく、言い聞かせてくるかあさま。ヒナタはかあさまが大好き。
「そんな……!」
 ヒナタは首を左右に振る。
「ヒナタ?」
「ともだちの血は飲めません」
 お嬢様のヒナタは血を採ってくる事なんて、今まで考えた事がなかった。
 自分はなんて残酷な事をしもべたちにさせてきたのだろう。そして、ネジはしもべではない。同じ日向の、吸血鬼。
「ともだちなら、血を採ってくる方法を教えてください」
「ヒナタ様?」
「ともだちなら……! ネジ兄さん……!」
 ともだちなら、本当の事を教えて。
 ともだちなら、本当に必要な事を教えて。
 ネジはそして、ヒナタにそれを教えたのだった。



 ゆるゆると時は流れて森の中。妖しい儀式が繰り返される古い家。
 夜の静寂の中を、美しい吸血鬼達が瞳を閃かせて駆け抜ける。
 ゆるゆると時は流れて--
「ネジ兄さん、お食事は終わった?」
 森の中で旅人を寝かせつけ、ヒナタは囁くように言う。
「ああ……眠りにつかせましたか。目覚めた時は……」
 ネジは成長したヒナタの鮮やかな手つきを見つめて言った。宗家のお嬢様でありながら、ヒナタは吸血鬼として人を襲う方法を覚えた。ただ黙って座って、食事をしもべに言いつける事だって出来たのに。
 はじめてのともだち、ネジがそれを教えたのだ。
 ヒナタはもうおかっぱの幼い少女ではない。
 漆黒の長髪に白眼の冷たい残酷な吸血鬼。魅惑的な豊満な胸をやはり漆黒の着物ドレスに包み、夜の闇に、旅人を襲う。
「目覚めた時は--」
 ネジはヒナタの甘い唇の間にのぞく妖艶な牙を見つめて言う。
「あなたの虜になっている事でしょう……」

entry top▲

[ スズシロ ]

❋COMMENT❋

AUTHOR: はすの|DATE: 12/04/2012 20:21:38|TITLE: ありがとうございますv

スズシロ様v 今年もご参加いただき、ありがとうございますv和風ゴスロリを着込んだ妖しくも美しいヴァンパイアですね。。。友達の血を飲むことは拒絶しつつもきちんと己が生きるため自分で狩りを行うお姫様・・・v 魔性のモノが本来持つ残虐性をそれすら魅力にしたヒナタ様・・・・なんて美しいんでしょうvv私も吸ってくださいvv(*´ω`*)ああ、しもべになりたいv ネジも骨抜きでしょうなぁvvvウフフ

はじめてのともだち

TAG: 吸血鬼 (8) /サクラ (4) /重吉 (19) /イラスト (51) /関連(4) |DATE: 12/08/2012 16:26:40

「お外は体に悪いんだよ ここでヒナタとお遊びして」
「あなた病気なの?」
「お外に行くと病気になるからここにいるの」
「こんな所にいた方が病気になるよ!!」

このツッコミ何度聞いても笑えるよね!
昔某方がサクラもヒナタもアリスだと言われてたので☆

[ 重吉 ]

❋COMMENT❋

AUTHOR: はすの|DATE: 12/08/2012 19:36:37|TITLE: ドキドキ((〃゚艸゚))ドキドキ

そして「ナイチャウゾvv」につづくんですねv(`・ω・´) イヤマテ吸血鬼はほんとに昼間お外に出ちゃったら病気どころか死んじゃうゾ☆彡 ワガママなヒナタ様も美味しいv そしてサクラちゃんと冒険の度にでるんですねvドキドキ((〃゚艸゚))ドキドキ

AUTHOR: 重吉 | DATE: 12/08/2012 21:41:08|TITLE: サクヒナ接点もっと希望n(*´∀`*)

元ネタわかってもらえなかったらどうしようと思ってた。゚(●'ω'o)゚。アリガトデスー!! 吸血鬼は病気どころか死んじゃうゾ☆彡 な駄文完成したところでしたww なんでわかっちゃうのはすのさっ…n(*´∀`)人(´∀`*)v ワガママなヒナタ様が 「サクラちゃんイジメたらヒナタ、パパのことキライになっちゃうモン☆」なんて言うトコ見たいですね!!!

「初めての友達」

TAG: 吸血鬼 (8) /サクラ (4) /ネジ (54) /重吉 (19) /小説 (39) /関連(4) |DATE: 12/09/2012 00:54:18

entry-50を描きながらentry-4とかentry-2とか色々まざっちゃった妄想駄文↓
[ 本文 ]





どうやら裏で糸を引いていたであろうヒザシが行方をくらませたので
件の子供がいかにして城に入り込んだかは結局判らずじまいだった。
 

決しておざなりにしていい問題ではないがそんなことよりも、
ヒナタの最初の反抗が「城を出る」という最大の禁忌だったことが
何よりネジを慄然とさせた。


王女のようにかしずかれ、不便や苦痛、恐怖の一切を知らずに育ったヒナタが
ただ一人の「自分以外」であり「従者」であり「家族」であったネジに頬を打たれ
悲しみか驚きか痛みか、静かに戦き涙を流してもネジの怒りは治まらなかった。
 

小鳥のように震えるヒナタの腕を掴み、それこそ57年目にして初めて部屋から出した。
ヒナタが焦がれた未知の「世界」が、いかに醜悪で残酷かその目に見せ付けるために。


意外な機転を利かせてまんまと人間の子供を逃がした後ずっと
しくしく泣いていたヒナタは、城の地下牢まで文字通り引き摺られ
自室にあるそれとは似ても似つかぬ鉄格子の向こう側に
かろうじて呼吸するいきものを認めて小さく悲鳴を上げた。
「よく見なさい」
完全に血の気を失ったヒナタに、ネジは容赦なく言う。
「外の世界に出て、陽射を浴びればあなたもああなる」
それは全身が卓上の獣肉のように焼け焦げて、
血の赤と肌の黒、所々に骨の白でしか判別できない男の姿だった。



 
本当は違う。
おそらくヒナタにとって陽光は綺麗に澄んだ水のようなものだ。
目に美しく肌に心地よく、潜れば吸気を隔たれるが
水から上がれば何ら危険はないと本能的に知れるもの。
 

もしも意思を持って影に逃げず苦しみに耐えてもいずれ気を失い
「蝙蝠」がひとりでに影を探し、主の体を護って事なきを得るだろう。
太陽の光でこんな火傷を負うことができたバンパイアなど
永き日向の歴史を振り返ってもネジは一人しか知らない。
 

転生したばかりの我が子に折れた羽根をかざして三ヶ月間、
灼熱の砂漠に骨まで焼かれながら正気を失わなかった男。
今この地下牢で一人死を待つヒナタの父以外に、ネジは知らない。
 

しかしネジはヒナタの恐怖心を煽り立てるように
――さしずめ人間の親が幼い子供にしつけの目的で
「悪さをすると吸血鬼がさらいに来るよ」とでも言うように、
「外に出ればあなたもああなる」と繰り返し言い聞かせた。




…でも、
吐息のような声でヒナタは言った。


でもあの子はきれいだった。
目は六連星のように煌き、
頬はエデンローズのように愛らしく、
唇は果実のように可憐で
その全てが生気に満ちていた。
「おそとで遊べば、ヒナタもすぐ元気になるよ、…って」


ぼたぼたと涙をこぼして独り言のように呟くヒナタは
ああ私はなんて馬鹿な期待をしたんだろうという顔で
しゃくり上げながら幼い夢に絶望した。
 

「ごめんなさい…」
 

あんな子にだまされて、危ない目に遭うところだった―――
眩しい外の世界になど、浅はかにもあこがれたなんて―――


ごめんなさい
ごめんなさい
 

ごめんなさい
もうぜったいに、
 

言いつけに背いたりしません
 

眉間にしわを寄せ歯噛みするように泣きじゃくる姿を見てネジは
ヒナタがすっかりネジの思う通りに落着したと安堵するばかりか
伯父と従妹に対する非道な振る舞いを恥じさえしたのに
 




だから、サクラちゃんには




「サクラちゃんには、何もしないで」
ヒナタの口からネジの知らぬ名を聞いた時、やはりあの子供は追うべきだったのだと舌打ちした。
 

 


 




ヒナタが二度目の「純化」を遂げ、父が遺した「黄金の牙」を手に宿縁の戦いへ身を投じた後
世界屈指のバンパイアハンターとなった「初めての友達」とあいまみえるのは…また別の話。

entry top▲

[ 重吉 ]

❋COMMENT❋

AUTHOR: はすの|DATE: 12/09/2012 07:21:52|TITLE: 超大作ぅ・・・・┌(┌^o^)┐

そして「狩るもの、狩られるもの」に続く(`・ω・´)なるほどーv 人を助けるヴァンパイアヒナタとヴァンパイアハンターサクラの一騎打ちとかー 巨大な悪に共闘して挑むとかー 思わずヴァン・ヘルシングをもう一度みたくなりましたv 正義のヴァンパイアヒナタさまも幼い頃はあんなにカワイイお子さんだったんですねーv^^ほっこりv

AUTHOR: 重吉|DATE: 12/09/2012 10:55:40|TITLE: サクラとヒナタは敵対しても共闘してもおいしい!!

この話、サクラが主人公だったら幼い頃友達になったバンパイアと大きくなって敵対する立場で再会して、誤解を乗り越え→仲良くなると思いきや、男性関係で再び亀裂→スパイダーマンのハリーみたいに美味しい所で共闘→ヒナタ戦死というルートを妄想して泣けてきた(´;ω;`)ブワッほっこりする話がいいやっぱ!

インタビューウィズヴァンパイア

TAG: 吸血鬼 (8) /カカシ (1) /ネジ (54) /光村真知 (3) /小説 (39) |DATE: 12/27/2012 20:26:04

祝☆ヒナコレ2012!
今年は参加します!!
[ 本文 ]





「ご存知の通りに、」

 

 金唐革紙の壁紙に四方を囲まれた部屋は薄暗かった。
 重厚な調度も全て、薄闇の中に沈黙している。ある意味大変に勿体無いことだ。白日の下でも十分に観賞に耐えうる、金のかかった品々であるだろうに。
「ご存知の通りに、私達のありようは吸血鬼、ヴァンパイア、と呼ばれる生き物のそれに大層似ています。」
 ゴブラン織りの張られた肘掛椅子に身を沈め、少女はゆっくりと語り出した。
「ただ、血を吸うわけではありません――」


 こんなことはとうに知っておいででしょうけれども、と前置き、それでも少女は丁寧に序説から言葉を綴った。
「吸血鬼、という存在は、出血多量、という医学知識を人が持ち得なかった時代に考え出されました。さして大きな傷を負ったわけではないのに…受けた傷の大小や深浅に関わらず、死んでしまう生き物がいるのは何故か、という疑問がそもそもの始まりでした。昔の人々は、その理由を、血というものに求めたのです。血には何か不思議な力、生きるためのエネルギーみたいなものが宿っていて、だから、さほどにひどく肉体を損ねてはいなくても、沢山の血を失ったものは死んでしまうのだと。
 そして夜の闇には、そのエネルギーを狙う魔物が跋扈しているのだと」
 薄明かりの中でも、彼女の膚のその白さ、滑らかさは十二分に見て取れる。
「ある意味でそれは正解です。…食べ物や飲み物を摂ることではエネルギーを得られない生き物…エネルギーを体内で合成できない、と言えばいいのでしょうか…純粋な状態のエネルギーでないと、自らの血肉にできない生き物」
 呟いて、少女は長い長い睫毛をしばたたかせた。愁いを帯びた白い瞳が伏せられる。
 暫く、室内には沈黙が満ちた。
「遥かな昔、大気にはもっと力があって…ただ呼吸するだけでよかった。それだけで世界に満ちているエネルギーを摂ることができた、といいます。でも…」
 細い肢体が椅子の背に軽く預けられた。
「…私が生まれた時 既に、世界はそうではなかった」
 ひそやかに、ため息のように告白は行われる。
「だから」
「人間からエネルギーを摂る」
 言葉尻をさらえば、少女は押し黙った。

「勿論、誰からでも摂れるわけではありません。適性というのか、素質というのか…体内で、太古からのエネルギーを作れるひと、というのは決まっていて…多分、それは生まれつきのものなのだと思います」
 暫しの沈黙の後、取り繕うように言って、少女は長く伸ばした黒髪の、これだけは短めに切った両脇の部分に指先を遊ばせた。
「ただ素質があるだけでもダメで、素質のある人に、…牙を打ち込む、と言えば良いのでしょうか…刻印を施すとか、しるしをつける、花を施す、…花を付ける、という言い方をするみたいですけれど。それをして初めて、エネルギーが摂れる状態になります」
 少女が身じろぎするたびに、喉もとからつま先まで、慎み深くその肢体を覆った白いワンピースの、表面がちらちらと、藤色の、すみれ色の、はたまた菖蒲色の、光沢を見せる。
「基本的には、一番最初に花を施した者の…あの、ものに。最初に花をつけたひとの、ものになります」
 もの、という言い方を、ひどく時間をかけて、ゆっくりと少女は発音した。まるで新人アナウンサーが、何度も練習したがついに滑舌良く発音できなかった単語を、本番で喋る時のように、慎重に。おそるおそる。
「自分が花をつけた相手からでないと栄養をとれないし、また、花がついていても、他の誰かの花では、栄養を分けてもらえないのです」
「つまり専属?」
「…まあ、そう…ですね。そんな感じです」
 すこし肩をすくめて、少女は苦笑した。
「だから当然、一度自分が花をつけた相手のところに何度も通うことになります」
「それこそ、陳腐な吸血鬼映画のように」
 茶化してやれば、少女は今度はくすっと、屈託なく笑う。微かにだったが、この会見で初めて、見せた気負いのない表情だった。
「でも、花をつけられても死ぬようなことはないんです…普通に飲んだり食べたりしていれば、花自身の――つけられた人自身のことも花、と呼ぶんですけれど――分のエネルギーはとれるので。
 私たちに与えるエネルギーと、花が消費するエネルギーは、どうも別のもののようで」
 ふうん。別に、良かったのに。たとえ、命を削り渡しているのであっても。
「ただ、あの…体のどこかに、独特の痣ができます。その…あの…つ、つまり…」
 へどもどと言いよどむ少女の、先をまた与えてやる。
「吸血鬼ものによくあるような牙の痕のように?」
「…はい」
「噛まれたところにできるんだーね?」
「あっ…いえ、いいえ、別にそんなことは…ただ、あの、…ええと、最初にエネルギーを貰った時に触った箇所に比較的多く出るようですけど」
「そしてそれは、別に頚動脈の位置に限らない」
「…………はい……」
「所有の証、というわけだ」
「………………………」
「他には?」
「あの…花になると、代謝の速度が変わります。年を取るのがゆっくりになる、と言えば判りやすいでしょうか」
「不老不死?」
「それは…」
「それこそ心臓に杭を打たれないと死なない?」
「…心臓に杭を打ち込まれて死なない生き物って、いるんですか……」
 聞きようによっては皮肉だったが、言いようによってそれは、単なる疑問文になっていた。
「それは、そうだーね。つまり不死ではない」
「私たちと同じ能力を得たりもできません…」
「じゃあ、痣が出来て、年を取るのがゆっくりになる。それだけ」
「…大体は」
「ゆっくり、って具体的にどれくらい?」
「判りません…ただ、多分だけれど、花は、対(つい)の寿命に合わせた時間を生きられるように、引き伸ばされてるんじゃないのかなって…」
「対?」
「え、あ、そ、その、花と呼ばれる人に対して、花にするひとを…私たちの側の種族を、そう、言うんです。…私たちの間でそう呼んでいるだけですけど」
 しどろもどろと説明する少女は、何故だか途端にもじもじし始めた。
「あの…あの、あなたに花を付けたのは、多分スカーの系譜です」
 挙句、下手糞に話題を変える。
「スカー?」
「俗称ですけど。傷跡にすごく似た形のしるしになることがとても多いんです。ヨーロッパの辺りに棲んでいる一族なんですけど」
 ああ。
 呟いて、自分の顔を派手に飾る傷跡(にしか見えない)に触る。
「君は?」
「私は…私の家系が花をつけると、額によく出ます。アジア地域に住んでいる一族に多いことなんだそうです。
 アジア地域の神様は、額に何らかの天印がある姿でよく表現されていますけど、それは私たちの花が影響したらしいです。私たち自身は人里を離れても生きていけるのですが、花は長くは生きられるし、病気とかにも罹り難いみたいだけど、それ以外は普通の人間だから…」
「人に混ざって生活していくことを好み、結果、神格化されちゃったわけだーね」
 長く若さを保ち、病にも倒れぬとあらば、何か特別の恩寵のある存在か、そも人間とは根本で異なる高次の存在として崇められることがあるのも頷ける。
「そうみたいです。宗教とか文化とか…一族の痕跡が結構残っていて、探すと面白いです」
 少女はまた屈託なく笑い、外見がほんの女学生ほどの年齢にしか見えないだけに、知識欲に目覚めたばかりの伸び盛りのようで、微笑ましい。
 ほんの少し水を向けたら、案の定、嬉々として乗ってきた。
 ボロブドゥールの無数の石像の中から、近縁の一族の印を額に付けた像をようやっと一つ、見つけた話。
 家系で花に現れる印は変わるが、印の異なる家系同士で婚姻を結んだら、生まれた子供の花は両家の印の特徴の双方を混ぜ合わせた形になり、それが西洋の、婚姻によって新たに出来た家は祖となった家の紋を混ぜ合わせて造る風習になったこと。
 チベットの石塔の中に、一族独特の合図を隠したものがいくつもあって、人が信仰のため積んだ石の塔と、どちらが先だったのかもう判然としないことなど。
 知識を得て単純に喜んでいるさまは、もしやこの、少女の姿をした生き物は、存外見かけどおりの年齢なのではと思わせるところがあった。

 暫く会話を楽しんで、頃合を見てそろそろおいとまするよと腰を上げる。
 見送りのためにか、扉口に出てきたところを見計らい、何でもないようなことのように振り返って、不意打ちを仕掛けた。
「ああ、そういえば。花に対して、対(つい)という言い方を使うのは何故」
 少女の瞳が大きく見開かれた。そうすると、白い瞳が、オパールのように複雑な色味を内包しているのが見て取れる。
 一瞬身を退きかけた手首を捉える。
 間近に見下ろす表情が歪み、
「……花は…花にとっては、生涯ただ一人の…相手だからです。でも、私たちは…」
まるで、喪服も脱がぬうちから、さあ、次はあの男に嫁げと。言い渡された未亡人のような、顔になった。
「時に…一生に、複数の花を…持つことがあります…」
「花が対の寿命にあわせた長さを生きられるなら、生涯につき花一人ということになるのに?」
 少女の顔に掘り込まれた苦痛の色がはっきりと、深いものになる。
 花は長くは生きられるし、病気にも罹り難いが、それ以外は普通の人間。
 先ほどのやりとりを思い出す。
 病気に罹り難いということは、罹らない、という絶対の確約を示すものではないのだろう。ほかにも、何かの理由で死んでしまうことがあるとも示唆している。
「…ああ、花が先に死ぬこともあるんだ。死なれたら、次の花を探すんだ」
「……はい」
 答える声は可哀想なくらい震えていた。可哀相などと、思わないけれど。
「逆を言えば、今の花が死なない限り別の人間を花にすることはできないの」
「それは…わかりません」
「なぜ?」
 詰問調で問い詰める。
「試したことも、そういう話を聞いたこともないので…」
「試さないのはなぜ?」
「………………」
 真珠の歯がただカタカタと鳴っていた。
「何か理由がある?」
「………………………その」
 ほんの少し語調を和らげれば唇を開くので、さらに声を努めて優しくして、先を促した。
「うん?」
「………その、対にとって、花は…花、は、その…単なるエサ、ではないので…」
「一度食べればそれでおしまいではない?」
「それも、ありますけど…」
「少なくとも、皿の中の食物のようには扱えないわけだ」
「……」
 ありきたりの食事を摂らないいきものに対して、これは判りにくい喩えだったかもしれない。
 捕われた手首を取り戻そうと、必死にもがくのを許さず、骨を折り砕いても構わないという意思を表示するように拘束を強めた。
「裏の裏を読むのが性分なんだよね。それに分析は得意な方なんだ。『時に』一生に複数の花を持つことがある、死なれたら次の花を探す、でも今の花が生きているうちに次を探すことはしない…愛着だって言えばそれまでだけど。花はエネルギー源なんでショ、もし死に掛けてるなら次を確保しておくのが当たり前じゃない。それをしないのは」
「やめて、もうやめて下さい…放して…」
「はっきり言ってくれる?」
 少女の大きな瞳から雫が零れ落ちた。深く俯き、捕われていない方の手でその顔を覆ってしまう。
「一族の…多くは…」
 嗚咽とともに、彼女は吐いた。
「花を失うと…次の花を選ぶことを放棄し…拒絶し…て、しまうことが殆どです…」
 結果、待つものは何か。
 心臓を貫かれて死なない生き物はいない。
 何一つ食べずに生きながらえる生き物もまた。
 それが答えだ。

「ありがとう」
 言葉が先か、手首を放すのが先か。非力なりに我が手を取り戻そうと必死に抗していた少女は唐突な解放に勢いあまって後ろに大きくよろめいた。背後の薄暗がり、正確には部屋の奥に位置する更に別の扉から駆け込んできた影が、こちらに飛び掛ってくるか少女を受け止めるか、一瞬だけ逡巡する。
「それが聞きたかった」
「貴様その顔二度と見せるな!」
 結局少女の体を抱き取って、代わりに怒号を叩きつけてくる影、否、青年の額に、浮かぶ卍に似た印を見るまでもなかった。
 自分だって、対の相手が誰かと親しく口を利いたり、あまつころころ笑ったり、挙句に力づくの真似を働かれるのを、耐えられはしない。
「訊きたいことはみんな聞いたから、言われなくても二度と会わなーいよ」
 ひらひらと手を振ってやる。
「ああ、重ねてアリガトね?俺なんか指先掠らせただけで殺せるのに、そうしなかったのは俺の対のことを考えてくれたんでしょ?俺を亡くせばあの人が悲しむ」
 これは青年の腕の中、殆どくず折れている少女に。
 そうだ彼(・)は悲しむ。
 痛くないですか?綺麗な顔だったのに。俺の顔にも傷があるから、こんな形で花が出ちゃったのかなあ。
 そう言ってこの顔に指先を滑らせて見てくれだけの傷さえ痛がったひと。
 二親を早くに亡くしたとかで、自分自身についての知識を殆ど持ち合わていない彼。
「お前の対は優しいねえ。…大切にしなよ」
 お前は、と言い添えるのはやめておいた。
 毛を逆立てるように威嚇してくる青年と、顔を伏せたまますすり泣く少女を省みず、今度こそ扉を開け放つ。
 光と活気に溢れた街に足を踏み出せば、背後の会見場は既に白昼夢のようにしか思えなかった。涙を流した少女も詮無い亡霊。
 自分の唇が酷薄な形に笑むのをカカシは自覚した。
 誰がどんなに泣き傷付いても構わない。自分の対が泣き傷付かないためならば。
 理非善悪など知らない。情などとうに凍らせた。そうして、命が尽きるまであの対と共に生き、死ぬ時は彼の命も貰っていく。次の花など自分は決して許さない。

 

 少女はいまだ泣き止まなかった。
 苦痛に耐えかねたように、絶望に打ちひしがれたように、嗚咽を吐き出し続けている。
 途方にくれてネジは、自分の手のひらの中に納まってしまう小さな肩口を撫でる。ほぼ見てくれどおりの年齢でしかない彼にとって、女の子というのはただでも度し難いいきものだ。
 見た目だけなら自分より、むしろ一つ二つ年下に見える少女が、実際にはいくつなのか、ネジはまったく知らない。その過去にいったい何があったのかも。
 彼に出来るのは、ただその肩口を撫でてやることだけ、
「…そばにいる、」
ひそやかにだが確りと囁きかけてやれるだけ。
「俺はずっとアナタのそばにいる、」
 オパールの虹彩を持った白い瞳がネジを見上げる、彼女がちっとも自分を信じてくれていないことをネジは知る、誓いははかなく破られていくものだと思っていることを。
 それでも彼は繰り返す、
「そばにいるよ」
 籠の扉が開け放たれても外に飛び立たない鳥のごとくに。
 いつかこの言葉よ届けと祈りながら。

 

 




(2012.12.27)

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光村 真知