はじめてのともだち
TAG: 吸血鬼 (8) /ネジ (54) /スズシロ (2) /小説 (39) |DATE: 12/04/2012 16:18:32▲
今年もよろしくお願いします。去年ハナヒナで参加したスズシロです。今回はネジとヒナタで吸血鬼、ヒナタ様にはゴスロリドレスをイメージして書きました。http://store.shopping.yahoo.co.jp/coszone/cos0063.html
↑絵がかけないので悔しいですがこんな感じとか……。 ヒナコレ、ヒナタ誕生日応援してます!
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夜中にひっそりと目を覚ます。 棺の中から静かに外に出て、幼いヒナタは白い瞳を瞬く。 白--ほんのりと薄紫。異形だけれど、とても美しい瞳。 短いおかっぱに白い瞳。ふっくらした頬、小さい手足。 ヒナタはまだたったのみっつ。 「ヒナタ、起きたの」 先に棺の中から起き出していたかあさまが、ヒナタに言った。 「そろそろ三歳のお祝いをしないとね、ヒナタに……」 「お祝い?」 ヒナタはおかっぱの頭を揺らして大好きなかあさまを見上げる。 「ヒナタもともだちが欲しいでしょう?」 「とも、だち?」 よく意味が分からなくて、ヒナタは白い瞳をくるりと瞬いた。 ともだちってなんだろう。 このときのヒナタの世界にいるのは、とうさまと、かあさまと、自分。 あと二年待てば、可愛い妹が増えるけれど、まだヒナタはそんなことは知らない。 世界にひとりぼっちの小さい女の子。 それに悲しそうな瞳を向けてかあさまは笑った。 「さあ、お食事にしましょうね」 お食事は--ワイングラスいっぱいの、赤い液体。 ひそやかな森の中。いにしえの血を引く名家日向の吸血鬼達は、ひめやかな儀式を繰り返して夜の静寂を生きていく。 しばらくたって、「お祝い」の日が来た。 三歳のヒナタは赤い綺麗な衣装に着替えさせられた。蝶々柄の真紅の着物ドレス、黒い帯、黒いレースにフリルにリボン。華やかな和風のゴシックロリータ。 それから「祖先の間」に連れて行かれてとうさまと儀式を行い、そこでヒナタは日向一族の長老達と初めて会って、認められた。 「いにしえの血を守るよう……」 殷々と響くその言葉に身も心も縛られそうで、ヒナタは怖くてとうさまの着物の裾をぎゅっと握った。 それからかあさまのいるお食事の間に行くと、ヒナタの知らない男の子が立っていた。 それが、出会い。 不思議だったのは、その子の隣に「とうさま」にうり二つの男の人が立っていた事。ヒナタには難しすぎて、事情がよく分からなかった。 「あなたは?」 「日向ネジ」 ワイングラスいっぱいの赤い液体。 ヒナタにそれを恭しく差し出しながら、そう年の変わらない男の子は言う。 「ネジとお呼びください、ヒナタ様」 「ヒナタ”様”?」 幼いヒナタには何が何だか分からない。 「ヒナタ、受け取ってあげなさい。それはネジの血なのよ」 かあさまがそう言った。 いにしえの名家日向には吸血鬼が生まれる。極めて優れた白眼をはじめとする能力を数々持つ吸血鬼と、そうでないもの。宗家のヒナタは吸血鬼に生まれたから、赤い血をしもべたちが準備してくれる。 だけど分家のネジは自分で血を採ってこなければならない吸血鬼。むしろ、自分より優れた吸血鬼”宗家”に血を差し出す方。同じ白眼でも、宗家と分家には決定的な差がつけられている-- かあさまはそういうことを話した。 「そしてネジははじめてのともだちなのよ、ヒナタ。仲良くしなさいね」 優しく、優しく、言い聞かせてくるかあさま。ヒナタはかあさまが大好き。 「そんな……!」 ヒナタは首を左右に振る。 「ヒナタ?」 「ともだちの血は飲めません」 お嬢様のヒナタは血を採ってくる事なんて、今まで考えた事がなかった。 自分はなんて残酷な事をしもべたちにさせてきたのだろう。そして、ネジはしもべではない。同じ日向の、吸血鬼。 「ともだちなら、血を採ってくる方法を教えてください」 「ヒナタ様?」 「ともだちなら……! ネジ兄さん……!」 ともだちなら、本当の事を教えて。 ともだちなら、本当に必要な事を教えて。 ネジはそして、ヒナタにそれを教えたのだった。 ゆるゆると時は流れて森の中。妖しい儀式が繰り返される古い家。 夜の静寂の中を、美しい吸血鬼達が瞳を閃かせて駆け抜ける。 ゆるゆると時は流れて-- 「ネジ兄さん、お食事は終わった?」 森の中で旅人を寝かせつけ、ヒナタは囁くように言う。 「ああ……眠りにつかせましたか。目覚めた時は……」 ネジは成長したヒナタの鮮やかな手つきを見つめて言った。宗家のお嬢様でありながら、ヒナタは吸血鬼として人を襲う方法を覚えた。ただ黙って座って、食事をしもべに言いつける事だって出来たのに。 はじめてのともだち、ネジがそれを教えたのだ。 ヒナタはもうおかっぱの幼い少女ではない。 漆黒の長髪に白眼の冷たい残酷な吸血鬼。魅惑的な豊満な胸をやはり漆黒の着物ドレスに包み、夜の闇に、旅人を襲う。 「目覚めた時は--」 ネジはヒナタの甘い唇の間にのぞく妖艶な牙を見つめて言う。 「あなたの虜になっている事でしょう……」
[ スズシロ ]
- ❋COMMENT❋
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AUTHOR: はすの|DATE: 12/04/2012 20:21:38|TITLE: ありがとうございますv
スズシロ様v 今年もご参加いただき、ありがとうございますv和風ゴスロリを着込んだ妖しくも美しいヴァンパイアですね。。。友達の血を飲むことは拒絶しつつもきちんと己が生きるため自分で狩りを行うお姫様・・・v 魔性のモノが本来持つ残虐性をそれすら魅力にしたヒナタ様・・・・なんて美しいんでしょうvv私も吸ってくださいvv(*´ω`*)ああ、しもべになりたいv ネジも骨抜きでしょうなぁvvvウフフ